第36章 心に灯る火
(コイツ…、エロい顔しやがって…ッ)
モモの施す口淫は、お世辞にも上手いとは言えない。
喉の奥まで咥えきれてないし、歯も当たる。
これで達せという方が難しいけど、ローは十分興奮していた。
「んふ…ぅ…ッ」
時折漏れる喘ぎ声が紅潮させた頬が、潤んだ瞳が、ローをどこまでも追い詰める。
きっと、こうして女と交わるのが久しぶりなせいだ。
だから、こんな下手くそな愛撫にさえ感じてしまうだけ。
「ん…、んぐ…。」
口の端から唾液がツウ…ッとつたった。
口の中では、さらに硬さを増した屹立が先端から先走りの液を溢れさせて、グチャグチャになって唾液と混ざり合う。
(…しょっぱい。)
舌の上に残る味に眉を寄せつつも、モモは溜まった唾液を飲み込んだ。
顎が痛くて外れそう。
その原因を与える彼を、上目遣いにチラリと見上げれば、少し息が上がり、欲情した瞳と目が合う。
男の人なのに、なんて色っぽいのだろう…。
ローの表情は、女の自分なんかより、色気を含んで美しかった。
そんな視線を、彼がモモに向けると、瞳にこもった熱が、まるで愛情のようだと錯覚しそうになる。
そんなはずないのに…。
甘い夢にしがみつこうとする自分を叱咤する。
でも、今だけ。
今だけは、勘違いさせて欲しい。
じゃないと、虚しくて死んでしまいそうだから。
息苦しさを堪えて、燃える肉棒を喉の奥にまで飲み込む。
吊りそうになる舌を懸命に動かし、顎の痛みに耐えながらキュウッと吸い上げると、モモの頭を掴んでいた手に力が入る。
次の瞬間、熱く苦い液体が、モモの喉奥を濡らした。