第36章 心に灯る火
(ああ、どうしよう…。)
モモは目の前に飛び出してきた男の象徴に、ピシリと石のように固まった。
当然ながら、初めて見たわけじゃない。
過去何度も身体を重ねたし、むしろ彼のものしか見たことがなかった。
それなのに…。
こんなに大きかった?
こんなに凶悪だった?
まるで涎を垂らした獣のようなソレは、今にもモモに噛みついてきそうだ。
(む、無理……。)
赤黒く光るグロテスクなモノに、怯えを通り越して失神しそうになる。
むしろ、このまま失神してしまった方が幸せかもしれない。
そんな逃亡じみた考えを巡らせていると、それを察知したのか上から無慈悲な声が降りてくる。
「……オイ。」
「……ッ」
ビクリと肩を震わせて恐々と見上げる。
すると、冷酷な瞳と目が合う。
「できねェんだったら、無理すんな。」
一見、優しげな言葉だが、彼の目がそうでないことを語る。
モモの背に、冷たい汗が流れた。
「…もう、我慢できねェんだよ。」
口で出来ないのならば、脚を開け。
そう、言われてる気がした…。
「できる…わ。」
負けてたまるもんか。
絶望の淵に立たされるくらいなら、こんなこと、どうってこないんだから。
意を決して、雄々しく反り起った屹立に触れた。
熱い…。
そっと握り込めば、モモの手の中でドクンドクンと脈打つ。
(え…と、どうすればいいんだっけ…。)
華奢な指を絡みつかせ、上下に擦った。
シュッ、シュッ…。
そうしていくうちに、先端から透明な蜜が滲み始め、モモの指先を濡らす。
(気持ち…いいかな?)
熱と固さを増すソレに、モモはゆっくりと唇を近づける。
チュッ…。
まるで唇にキスをするように、滾りきった屹立に口づけた。