第36章 心に灯る火
背中に、ゴワゴワとした絨毯の感触が当たっている。
ローの指先が、優しく頬を撫でる。
止めて、そんなふうに見ないで。
指先は頬の上を滑り、髪を梳いた。
止めて、そんなふうに触らないで。
わたしは…、あなたの恋人じゃない。
大きな金緑色の瞳が、ローを見つめる。
その宝石のような輝きに引き寄せれるように、再びキスを落とす。
「止め…て…。」
唇が触れる瞬間、掠れるような声が耳に届く。
モモを見つめ返せば、彼女は怯えた目をして唇を戦慄かせていた。
ここで止めるべきだ。
そうはわかっていても、モモが欲しいという気持ちを止められなかった。
彼女の制止を聞かず、吐息がかかる距離を一気に詰める。
「……んッ」
抵抗するモモの腕を押さえ込み、何度も何度も角度を変えて口づけた。
「ふぅ…、んむ…ぅ。」
キスを深くするたび、モモの唇から艶のある喘ぎ声が漏れる。
抱きてェ…。
最初は触れるだけのつもりだった。
その唇に、少しだけ触れるだけで良かった。
それなのに、触れた箇所から熱がこもり、今では身体中に火がついたように熱い。
モモの気持ちを考えれば、今すぐ離れてやるべきだ。
頭ではわかっているのに、身体が言うことをきいてくれない。
彼女が欲しくて欲しくて堪らない。
まるで、今まで鎮火していた情熱が、モモに向けて一気に燃え上がったようだ。
軽く唇を食み、チュッと音を立てて吸い離す。
離れたローの唇は、そのままモモの首筋に下りてキスの雨を降らす。
「あ…ッ、やだ……んく…ぅ…ッ」
ズキンと痛む首筋に、ローがキスの痕をつけたのがわかった。
どうして…?
どうして、こうなったの?