第36章 心に灯る火
(俺の新聞…?)
新聞の一面には、ローとルフィの写真がでかでかと掲載されており、2人がドフラミンゴを倒したことが書き綴られている。
ああ、だからか。
だから、彼女は出会ったとき、ローの名前を知っていたのだ。
今さらながら、謎が解けた。
世界を揺るがすほどのビッグニュース。
この新聞をモモが持っていても不思議はない。
けれども、この反応はなんだろう。
「お願い…、返して!」
腕の中の彼女は、顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、必死に新聞を取り返そうとする。
羞恥に塗れたその表情は、ローの心をくすぐった。
(…俺は…なにを考えてる。)
たった今、彼女を怖がらせたばかりじゃないか。
それなのに、拘束する腕を離せない。
新聞を返してやればいいだけなのに、それができない。
涙に濡れた金緑色の瞳が、懇願するようにローを見つめた。
……ピクリ。
ローの身体に変化が起きる。
女に興味が持てない。
欲情しない。
ある意味、欠陥していたローの身体が、反応を見せた。
けれども、ローはそれに驚いている余裕はなく、目の前の欲望を堪えるのに精一杯だ。
身体は寄り添い、熱い瞳で見つめられる。
彼女の甘そうな唇に、噛みつきたくなる衝動が絶え間なく襲ってきた。
モモにそんなつもりがないことは わかっているし、ここで手を出せば最低な男となるだろう。
わかっているのに、彼女の唇から目が離せない。
「お願い…、ロー…。」
プツン…。
愛らしい唇が、自分の名を紡いだとき、ついに自制の糸が切れた。
代わりに、ローの心に火が灯る。
欲望の火。
バサリ…。
ローの手から新聞が落ち、床に落下した。
それをモモが視線で追った瞬間、腰を引き寄せ、頭の後ろに手を差し入れて、噛みつくように唇を塞いだ。
「…んんッ!?」
モモにしてみれば急すぎる行動に当然驚き、身体を引こうとするけど、それを許したりはしない。
重ねた唇は、想像以上に甘かった。