第6章 戦いの中で
「でもモモはずっとキャプテンに付いてたよ。」
「そうそう…、それで様子を見に来たら、もう船長の容態は良くなってたよな。」
やはり、と思った。
では2人きりのときにモモは何かをしたのだ。
「俺の容態がそんなにすぐに良くなるわけない。アイツはなにか、隠してる。」
え、とみんな驚いた。
「隠してるって、モモが…?」
「そんなふうには見えないけど、例えばなにを?」
「そうだな、例えば能力者だとか…。」
「それは無いっスよ。だってモモは泳げるし。」
能力者は例外なくカナヅチになる。誰もが知っていることだ。
でもモモは、海軍の船から脱出した通り、カナヅチではない。
「じゃあ、モモはなぜ海軍に追われてるんだろうな。」
「キャプテン、気になるなら聞いてみればいいじゃない。」
俺になにをした?
なぜ海軍に追われてる?
「アイツはたぶん、答えねェよ。」
きっと笑って誤魔化そうとするのだ。
あの笑顔で…。
「…『セイレーン』。」
「え?」
ポツリと呟いたローの一言にみんな目を丸くする。
「海軍のヤツら、モモをそう呼んでた。セイレーンってなんだろうな。」
「そりゃ、あれっスよ。綺麗な歌声で男たちをメロメロにして、船を沈没させちゃうっていう海の妖精。」
(歌声…。)
そういえば、夢の中でなにか歌を聞いた気がする。
ハッキリ思い出せないけど、聞いたことがないくらい、美しい歌だった気がするのだ。
どんな歌だったか、と思い出そうとすると、コンコンと叩かれたノック音が邪魔をした。
「…あ、モモ。」
ひょっこり現れたモモは、みんなを手招きした。
「ゴハンが出来たって? わかった、今行くよ。キャプテン、キッチンに上がれそう?」
「…ああ。」
どこにも身体に不調はない。
一同は、ひとつの疑念を残して医務室を出た。