第6章 戦いの中で
「……ん。」
ローは重たくなった瞼を開けた。
「船長! ああ、良かった…!」
仲間たちの安堵の声が聞こえた。
「……俺は…?」
状況がイマイチわからない。
「覚えてます? 船長、クラゲに刺されたんスよ。」
(ああ、思い出した。確か、モモを庇って…。)
視線でモモを探すと、彼女は心配そうにこちらを見つめている。
(無事だったか…。)
モモさえ無事なら、それでいい。
「でもさすがキャプテン! ものの数時間で回復しちゃうなんてさ。」
ベポの言葉に目を剥く。
「…なんだと?」
あのクラゲの有毒性はよく知っている。
意識が遠のいたときには、最悪、死も覚悟していた。
てっきり自分は数日間、生死をさ迷ったとばかり思っていたが…。
「俺が倒れてから、どのくらい経った。」
「えーっと、3時間くらい…?」
(3時間…!?)
あり得ない。
いくらローに体力があっても、そんな短時間で回復するほど、あの毒は甘くない。
手の甲にできているはずの刺し傷を確認した。
ところが、あるはずの傷は跡形もなく消えている。
(どういうことだ…?)
「良かった、治ってるね。きっと、モモが塗った薬が良かったんだよ。」
(薬…?)
薬でこんなに早く傷痕が消えるものか。
モモに説明しろ、と視線を送るが、彼女はただ、微笑むばかりだった。
その笑顔は、嫌いだ。
モモが、誤魔化すときにする笑顔。
なぜ海軍に追われていたかを聞いたときも、なぜ喋れないのかと聞いたときも、そうやって笑っていた。
(なぜ、そんなふうに笑う。俺が信用できねェのか?)
ローの強い視線から逃れるように、モモは立ち上がった。
「あ、そろそろ夕飯の支度だもんね。ありがとう、モモ。」
頷いて彼女は医務室から出て行った。
「オイ…、お前ら、俺が倒れた後のことを細かく話せ。」
起き上がり、仲間たちに尋ねた。
「え、どうしたんスか船長。」
「この毒はそんな簡単に回復するモンじゃねェんだよ。俺の容態はどうだった?」
「息が荒くて苦しそうでしたけど…。」
「俺たちもずっと傍にいたわけじゃねぇんで。」