第36章 心に灯る火
次の日の昼過ぎ、コハクにベポとシャチ、ペンギンとジャンバールの5人は、隣の島へと出かけていった。
「それじゃあ、明日の朝には戻るからね。」
「母さん、本当に行かないの?」
こんな機会、滅多にないのに。
「ええ、お留守番してるわ。コハクこそ、みんなに迷惑を掛けちゃダメよ?」
かつての仲間たちとの冒険は、とても魅力的ではあったけど、それでもモモは自分の中の約束事を破るわけにはいかない。
「船長も残るッスか?」
「…ああ、読みかけの本がある。」
半分は本当のこと。
だけど、もう半分は違う。
モモのことが心配だったから。
だって彼女は、ローがコハクたちに冒険の許可を出したとき、少しだけ…寂しそうな顔をしたのだ。
『出ないわ、一生……。』
あの日、夜の薬草畑でローはモモに聞いた。
この島を出るつもりはないのか…と。
彼女は、一生出ないと答えた。
モモはローより3つ年下。
そんな彼女が、この島に縛られ続ける理由はなんだろう。
たかだか隣の島に行くことさえも、許されない理由はなんだろう。
例えば、彼女を無理やりこの島から連れ出したなら、なにが起きるのだろう。
神の天罰でも落ちるのか、それとも海神の怒りでも買うのか。
「いってらっしゃい!」
笑顔で手を振るモモの横顔を見て、ローはぼんやりと考えた。
彼女を自由にするには、どうしたらいいのか…。