第35章 歌とぬくもり
「ゲホ…、お、お前…いきなりなに言い出すんだよ!!」
同じく咽せ混みながらもモモの背をさすり、コハクはベポを睨んだ。
「え、なにかおかしいこと言ったかな、おれ。」
「「おかしいとこだらけだわッ!」」
仲間たちの突っ込みが飛ぶ。
ロー本人も、不意打ちのような発言に動揺を隠せず、口の中のものを吐き出すような惨状こそ免れたが、しばらく顔を上げられそうにない。
「そうかなァ…。ねえキャプテン、どう思う?」
こっちに振るな…!
「あァでも、確かに船長とモモなら、絵になること間違いないッスねぇ。」
「あー、美男美女だもんなぁ…。悔しいけど。」
ふと頭の中に2人が寄り添う姿を思い描くと、ビックリするくらい、しっくりくる。
「はぁ? 母さんはいいとして、なんでローが美男になるんだよ。ただ目つきが悪いだけだろ。」
母と並ぶなど、100年早い。
「船長の良さを知るには、お前にはまだ早いかもしれないな…。」
「なんだよ…!」
遠まわしに「まだ子供だ」と言われた気がして、今度はジャンバールを睨みつけた。
「で? どうなんスか、船長。モモのこと、ちょっといいと思いません?」
悪ノリしたシャチとペンギンが、いつの間にかベポ側にまわり、ワクワクと尋ねてくる。
コイツら…!
「あ、あの…。」
しばらく黙っていたけど、この場の空気に耐えきれず、モモはついに声をあげた。
みんな、忘れてない?
わたし、ここにいるんだけど…。
しかし、おもしろい話題を見つけてしまった2人の悪ふざけは止まることなく、むしろ悪化していった。
「おい、2人とも…。そのへんにしておけ。」
固まり続けるモモを不憫に思ったのか、ジャンバールが止めに入るけど、その声すら耳に入らないようだ。
「ねえ、船長どうなんですか!? やっぱり、船長もモモことを良いと思う?」