第35章 歌とぬくもり
「美味しいー! モモって、料理すっごく上手いね!」
病み上がりのはずのベポは、今までのカロリーを取り戻すかのようにバクバクとトカゲの肉を貪り食べた。
「きっと素材がいいのよ。まだまだたくさんあるから、いっぱい食べてね。」
ローが狩りから戻ってきたときには、本当にどうしようかと思った。
ドラゴンかと思えるほどの巨大トカゲ。
コハクの挑発に苛立ってたから、なにかしら穫ってくるだろうなとは思ったけど、なにもこんなに大きいエモノにしなくても…。
食べ切る前に肉が腐るんじゃないかと思ったけど、この調子なら おおかたベポのお腹に収まりそうだ。
「これ、キャプテンが獲ってきてくれたの?」
「ああ。」
「嬉しいなぁ! すごい美味しいよ。」
「そりゃァ、コイツの腕だろう。」
料理が美味しいのは、素材の力じゃなくてモモの腕。
そう言い放つローに、ベポは自分が眠っている間に2人はずいぶん打ち解けたんだなぁと珍しく思った。
他人をなかなか褒めない上に、女性にあまり優しくないロー。
だけどモモのことは認めているらしい。
「ねぇ、モモは結婚してるの?」
「え…? ううん、してないわ。」
ベポがチラリと左薬指を見た。
ああ、そうか。
指輪をしてるから勘違いしたのね。
モモの薬指にはスターエメラルドが輝くプラチナの指輪。
一方的かもしれないけど、この指輪は自分とローの絆だから、片時も外したくない。
だけどこうして、あらぬ誤解を招くこともあるのね…とモモが心で思っていると、ベポが安心したように笑った。
「そっか、良かった。じゃあさ、キャプテンのお嫁さんになったら?」
ぶふ…ッ!!
あり得ない爆弾発言に、指名された当人たちだけでなく、全員が吹き出した。
「ゴホ…ッ、ゲホゲホ…ッ!」
モモにいたっては、茶が変なところに入り咽せた咳が止まらない。