第35章 歌とぬくもり
「「ベポ……!!」」
ローとコハクの少し後に戻ってきたシャチ、ペンギン、ジャンバールは元気になった仲間の姿を見るなり、開口一番、驚きの声を上げた。
「みんな~!」
白い巨大が駆けていき、体当たりをする勢いで3人に抱きつく。
「どわ…ッ!」
「あ、暑苦しいッス…!」
「元気になったのか、ベポ。…良かった。」
力強い抱擁に、彼が本当に元気になったことがわかる。
だがしかし…、少し元気になりすぎてはないか?
そう思えるほど、ベポの抱擁は強かった。
「って、苦しいわ! いい加減離せっつの。さては、お前…病気のフリでもしてたな?」
「シャチ、ヒド! そんなんじゃないよー。でも今はすっごく元気だし、おれは明日にでも船に戻れるよ!」
長らく眠っていたからだろうか、海が恋しい。
「ダメに決まってんだろ! 母さんの薬はよく効くから すぐに元気がでるけど、病気を甘く見るなよな。」
ベポの後ろで、怒ったようにコハクが吠えた。
「ええー。おれ、こんなに元気なのにな…。」
「じゃあ、サボってないで肉の切り分け手伝えよ。半分はお前たちの船に乗せるんだぞ。」
ビシッと指差す方向には、先ほどローが狩ってきたばかりの巨大トカゲが見事に肉塊と化していた。
「…サボりクマで、スミマセン。」
「な、なんだよ…。落ち込むなよ、オレだって本気で言ったわけじゃねーよ。その、ゴメンな?」
ズーンと落ち込むベポに、こっちが慌ててしまう。
クマって、ハートの弱い生き物なんだなぁ…。
人生初めて、クマと触れ合ったコハクは、世の中のクマが全員こうなのだと かなり残念な誤解をしてしまうのだった。