第35章 歌とぬくもり
「なぁ、ちょっと。お前ら、ヒマなんだろ? だったら、朝メシ穫るの手伝ってよ。」
コハクはこの家にいるハートの海賊団、全員に向けて言った。
「朝飯ィ?」
「そうだよ。島には肉屋も魚屋もないんだから、自分たちで穫らないと食べられないんだ。」
タダ飯、タダ宿なんだから、それくらい手伝って同然だろ?
「…お前ら、行ってこい。」
「はぁ? ローもだよ。船長なんだから、1番大きいエモノ穫れよな。」
あっさり部下に任せようとするローの腕を、そうはさせないと強く引っ張る。
「面倒くせェ、コイツらだけで十分だろう。」
「あー…、もしかして、自信ないんだ。」
「……なに?」
どうにかローも連れ出したくて、少し挑発してみると、思いのほか反応があった。
「アンタ、強いのかと思ってたけど、実はそうでもないんじゃねーの? 自信がないなら、待っててもいいよ。」
「お、おい、コハク。船長になんてこと言うんだよ。」
プライドの高いローのこと。
コハクがひっぱたかれやしないか、見てるこっちがドキドキする。
「クソガキが…。いいだろう、お前の見たことねェぐらいのエモノを仕留めてやる。」
さすがのローも、子供に手を出すほどの男じゃない。
だけど売られたケンカはしっかり買った。
「ふん、大口叩いちゃって。ちょうどいいや、ローの実力がどんなものか見せろよ。」
どこまでも生意気なコハクに本気で腹が立つ。
ローは黙って立ち上がると、鬼哭を携えサッサと外へ出て行った。
「あ…、待てって船長!」
置いてきぼりにされたクルーたちが慌てて後を追っていった。
(コハク、ありがとう。)
愛する息子は、いつも自分の気持ちを理解してくれる。
誰もいなくなった家の中で、モモは静かにベポの眠るベッドへと腰掛けた。