第35章 歌とぬくもり
「な…、なんだよ…ぞれェ! めっぢゃ悲じい…!」
「ぐす…、泣げるッスねぇ。」
コハクの話を聞いて、シャチとペンギンは男泣いた。
ジャンバールも若干ジーンとしている。
「おい…、泣くなよ。お前ら、もう大きいんだから!」
1人前の男は涙を見せないものだとコハクは勝手に思っている。
現にローは涼しい顔をしているじゃないか。
(アイツは1人前の男なんだな…。)
それとも単に、興味がないだけだろうか…。
ああ、まったく。
どうしてコイツらに、こんな話をしてしまったんだろう。
ガチャ…。
「ただいまー。」
「「……!!」」
思ったよりも早いモモの帰宅に、ロー以外のすべての人間が固まった。
「……みんな、どうしたの?」
ものすごく異様な光景だ。
なんでシャチとペンギンは泣いているんだろう。
「あー…、あッ、そうそう。なんかみんな腹減ったんだって!」
「えッ、泣くほどに…!?」
驚いて2人を見ると、鼻を啜りながらもウンウンと頷いた。
「そ、そう…! もう、腹ペコペコで!」
「そうッス! ついでに酒も飲みたいっていうか…。」
「いや、ペンギン…。酒は関係ないんじゃないのか…?」
冷静なジャンバールの突っ込みに、ペンギンは「え、酒は大事ッスよ?」と、また空気の読めない発言をした。
「えっと、ごめんなさい。すぐに用意をするから、待ってて?」
採ってきたリリアスを入れたカゴをヒスイに預けると、モモは急いでエプロンを手に、キッチンへ立った。
(は…ッ! これは…もしかしなくても女の子の手料理を食べれる大チャンス!?)
(マジだ! なんてグッジョブなんスか!)
神様、コハク様…!
「な、なんだよ…。」
歓喜の眼差しを向けられ、コハクは気味悪そうにたじろいだ。