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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第35章 歌とぬくもり




「父さんは…、ローが考えてるようなヤツじゃねーよ。」

ローの考えていることがわかったのか、キッパリと否定する。

「なぜそう思う。」

普通に考えて、最低な男に思えるが。

「…母さんには、聞いたって言うなよな。」

モモが出て行った玄関をチラリと見たあと、コハクは声のトーンを低めにして語り出す。

「父さんは、オレが生まれたことを知らないんだ。」

「えッ、なんで?」

「母さんが言わなかったんだよ。」


昔、一度だけ…モモに尋ねたことがある。

なぜ自分には、父親がいないのか…と。

別にそれは、父親が欲しいとか、いなくて寂しいとか そういう気持ちではなく、ただ純粋な疑問。

母はよく父のことを語った。

素敵なひと。
優しいひと。
強いひと。

だけど、コハクはたった一度も父と会ったことがなかったから。


『ごめんね…。』

モモは泣いてコハクに謝った。

『わたしのせいよ…。』

それは、泣き虫な母が初めて見せた“自責の涙”。

『お父さんは、あなたのことを知らないの。わたしが…言わなかったから。』

父には夢があったという。

モモはその夢を、心から応援していた。

そんなときだ。
コハクを授かったのは。

喜びと同時に、モモは選択を迫られた。

このままでは、父の夢を妨げてしまう…と。

優しい父は、母の傍を決して離れることはしないから。

だから、モモは父に黙って船を降り、別れを選んだのだと。


『あなたからお父さんを奪ったのは、わたしよ…。ごめんね、コハク…ッ』


あれほど悲しそうな母を、コハクは見たことがない。

自分が悪いと思うからこそ、真実を話したのだろう。

いくらでも嘘は吐けたはずなのに…。



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