第34章 起きて見る夢
「嘘だ! 空に浮かぶ島なんか、あるはずない!」
「あんるだな~、コレが。俺たち、行ってきたもん。」
ドヤ顔で言い放つシャチに、モモがピクリと反応した。
(そうか、みんな…空島に行ったのね。)
『空島を目指す。』
『モモ、うそつきノーランドは北の海では知らないヤツなんていないくらい、有名な話なんだぜ。』
『北の海の男なら、黄金郷の真相を突き止めに行かねえとな!』
『なら、行ってみるしかねェだろ。』
カプワ・ノールの酒場で話したことが、昨日のことのように思い出される。
「なぁ、母さん! シャチの言ってることって本当?」
急に話を振られ、モモはハッと我に返った。
「本当よ。空の上には雲に浮かぶ島が存在するわ。」
「ええ! どうやって雲の上に…。母さん、空島に行ったことあんの?」
「…いいえ、ないわ。残念だけど。」
その寸前で船を降りてしまったから…。
「空島は、普通の人間が簡単に行けるところじゃねェよ。」
天候も気流も特殊だし、生息する猛獣も凶暴なヤツばかりだ。
とてもモモのような女が、観光気分で行けるようなところじゃない。
「普通の人間ってなんだよ。こう見えても、母さんは昔、海賊だったんだからな!」
モモをバカにされたような気がして、思わず言い返した。
「「海賊…!?」」
これには全員一致で驚いた。
もちろん、ローも。
「海賊…? お前がか…?」
過去の話をバラされ、モモはコハクを軽く睨む。
「…昔の話よ。海賊っていったって、なにもあなた達みたいに闘ってたわけじゃないわ。ただ、海賊船の薬剤師をしていただけ。」
「へえ、どこの海賊船ッスか?」
「…秘密よ。」
そう言うと、モモは椅子からガタリと立ち上がる。
「ちょっとわたし、畑にリリアスを採りに行ってくるわ。たぶん、まだまだ必要になると思うから。」
「じゃあ、オレも行くよ。」
ついて来ようとするコハクを目で制した。
「ひとりで平気よ。せっかくだから、みんなに冒険のお話でも聞かせてもらったらいいわ。」
あなたは、1秒でも多くローと話して。
それは、モモの勝手な願いだ。