第34章 起きて見る夢
あっという間に作り上げた煎じ薬を、モモは早速ベポに飲ませた。
意識がないから、気管に入らないようにゆっくりと。
すると、効果はすぐに現れ、ゼェゼェと荒く息をしていたベポの呼吸が、しだいに穏やかになっていく。
「おお、すげぇ! 治ったのか!?」
「そんなすぐに治るかよ。」
パチパチと拍手をするシャチに、コハクが冷たい視線を投げかける。
「そうね、まだ状態が少し良くなっただけよ。薬を投与しながら しばらく様子を見ましょう。…いい?」
きっと数日はかかるだろう。
了承を得るようにローへ尋ねた。
「ああ。その代わり、しばらく滞在させてもらうぞ。」
「もちろんよ。2階の空いている部屋を好きに使って。」
少しでも仲間の傍にいたいはず。
モモの言葉にコハクは少し渋い顔をしたけど、今度は異を唱えなかった。
「お風呂とかも自由に使っていいのだけど、ウチは少し変わってるから…わからないことがあったら、わたしかコハクに聞いてね。」
「…? 変わってるってどの辺ッスか?」
見てくれは確かに変な家だが、内装はいたって普通に思える。
「ウチは母さんが育てた植物で成り立ってんだよ。」
例えば火は、火吹草を使って起こす。
そして水は、ガレオスサボテンという砂漠に生息するサボテンに貯蓄したものを使う。
この島には電気もガスも水道も通っていない。
だからこうやって植物たちに助けてもらっているのだ。
「へぇ、便利なものッスねえ。」
そういえばこの家には、いたるところに植物がある。
この部屋にも光を蓄えるランプ草が数本鉢に植えられていた。
「すげぇな、空島のダイヤルみたいなもんか。」
「空島…ってなんだよ。」
「なんだ、知らねぇのか? 空島ってのは空に浮かぶ島だよ。」
シャチの言葉に、コハクは「ええッ!?」と驚いた。
そういう姿は、とても子供らしい。