第34章 起きて見る夢
夢じゃ、ない。
本当に、夢じゃないのね。
菜園へと続く道を歩きながら、モモは自分の頬をぐにっと抓った。
(痛い…。)
じゃあ、現実なんだ。
さっきまでの出来事は、夢なんかじゃないんだ…!
「ふ…、うぅ…ッ」
ずっと堪えていた涙が押し寄せ、嗚咽と共に零れる。
嘘みたい、本当に…?
ねえ、こんな幸せなことってある?
生涯二度と会えないと思っていた。
姿はもちろん、声も匂いも、もう二度と感じられないと思っていた。
永遠に、夢の中でしか会えないものと…。
嬉しくて、嬉しくて、叫びだしたい。
幸せだって叫んで、世界中の人たちにキスをして回りたい。
ベポが大変な目に合っているというのに、この溢れ出す喜びを止めることができなかった。
大丈夫、ベポはなんとしても助けてみせる。
そしてみんなを、再び海へ送り出すから。
寂しくなんてないよ。
今度こそ、泣いたりしない。
だって、わかったの。
奇跡は起こるんだって。
ありがとう。
ありがとう。
あなたはわたしに、夢を見させに来てくれたのね。
眠りの世界にある夢じゃなくって、
起きたまま見る夢を…--。
ねえ、わたし。
幸せよ。