第34章 起きて見る夢
「この部屋のベッドを使って。」
モモが案内したのは、家の1階に位置する仕事部屋。
一応病室も兼ねた この部屋には、大きなベッドがある。
「よっこらせ…っと。」
ジャンバールが背負ってきたベポを横たわらせると、モモは早速 薬の調合を始めた。
「リリアスと…、オリエの実。それからイリキア草も入れましょう。ヒスイ、煎じ薬にするから、お湯を沸かしてちょうだい。」
「きゅきゅ!」
薬棚からリリアスと乾燥させた薬草を数種類取り出したモモは素早くヒスイに指示を出し、ヒスイもそれに従い要領よく動く。
今でこそ、コハクと共に行動をしているヒスイだが、もともとはモモの相棒。
一緒にいる時間が1番長かったこともあり、互いを分かり合った2人は、息もぴったりだ。
「母さん、オレも手伝うよ。」
負けじとコハクも手伝いを買って出る。
「ありがとう。それじゃ、氷を砕いて氷嚢を作ってもらえる?」
ベポの意識はないけど、きっと高熱で頭痛がするはずだから。
「わかった!」
ローは壁に寄りかかりながら、モモの仕事ぶりを眺めていた。
ベポを任せて欲しいと言い放つあたり、自分の腕には自信がありそうだと思っていたが、なるほど…確かに腕はいい。
ローが今まで見た、どんな薬剤師よりも素早く、的確に調合する。
(こんな島に眠らせておくには、もったいねェ女だ。)
なぜ彼女が こんな無人島で生活するのかは知らないが、これでは宝の持ち腐れというもの。
もっと、活かせる場所があるだろうに。
例えば、ウチの船とか…。
ふと浮かんだ考えにハッとして、軽く頭を振った。
(なに考えてんだ、俺は……。)
女なんか船に乗せたら、ロクなことがない。
隣には、ベポを心配する気持ちと、モモが気になる気持ちとが混ざり合って葛藤するシャチとペンギン。
コイツらと同じにされたくねェな…。