第34章 起きて見る夢
ローたちの案内で、モモとコハクは島の海岸、彼らが船を停泊している場所へとやってきた。
そこには、大きな黄色い船が泊まっている。
「うわぁ、すっげぇ! これって、潜水艦かよ!」
隣でコハクが感嘆の声を上げたが、モモの耳にはその声すら入らなかった。
『お前はどんな船がいいと思う。』
『そういえば、お前。色ならなにが好きだ?』
『ンマー!! 1年後にまた来い。それまでに、必ず完成させてやる。』
『さようなら、アイスバーグさん。潜水艦、楽しみにしてますね!』
1年経ったらまた来る。
そう約束してウォーターセブンを旅立った。
だけど、モモは結局、約束を果たせなかった。
幸せを呼ぶ黄色い潜水艦。
彼らは1年後、どんな想いで先代の船と別れ、どんな想いで潜水艦に乗ったのだろう。
潜水艦の姿さえ目にできぬモモには、想像することしかできなかった。
だけど、今…--。
「きゅい…。」
ヒスイがコハクの頭からモモの肩へと飛び移る。
そうね、ヒスイ。
あなたも今、同じ気持ちなんでしょう?
今日、この瞬間、モモとヒスイに“1年後”がやってきたのだ。
果たせなかった約束は、山ほどある。
これは、その内のひとつでしかない。
でも、たったひとつでも、モモにとっては夢のような奇跡に近い。
「どうした、来い。まさかハシゴが怖ェとか言わねェよな…。」
立ち尽くしたままのモモに、ローが怪訝そうに手を差しのべる。
「そんなんじゃないわ…。」
これでも6年前は、あなた達の仲間だったんですからね!
…と、言えるはずもなく、モモはありがたくローの手を取らせてもらった。
少し骨張った大きな手に、少しだけ胸がときめいたけど、今はそれどころじゃない。
モモの大事な親友が、苦しんでいるかもしれないんだから。