第34章 起きて見る夢
「お前がコイツの母親か?」
ローの顎がクイッとコハクを指し示す。
「…ええ。」
2人はいつの間に知り合いになったのだろう。
気になったけど、今はグッと我慢する。
「なら、お前が“世界一の薬剤師”なのか。」
「え…?」
世界一の薬剤師になるのはモモの夢だが、今の自分がそうかと言われれば頷いてみせるほどモモは自信家ではない。
自分の夢は、未だ途中。
「そうだよ、母さんは世界一の薬剤師だ。」
「…コハク!」
どうやら情報の発信源はココらしい。
またそんなに話を盛って…恥ずかしい。
「分けてもらいたい薬がある。」
「薬を…?」
頼み…というには、憮然すぎるローのお願いにモモは目を瞬かせた。
「ああ、リリアスという薬草を知っているな。」
リリアス…。
薄紅色の葉をした、珍しい薬草。
あまり知られていないが、目の疲れを取る薬として効果がある。
でも、世間に知られているリリアスの効果は…。
ドクン…。
心臓が嫌な音を立てた。
「知っているし、持っているわ。」
「なら、それを分けてくれ。金に糸目はつけねェ。」
「もちろん。だけど、条件があるの…。」
「条件…?」
またか、と思った。
コハクに引き続きモモまでも。
今度はどんな条件やら…。
「いいだろう、言ってみろ。」
どんな要求でも応えてやる、と彼女を見返せば、そこには先ほどまでの怯えた女の姿はなく、凛とした空気を纏った薬剤師がいた。
「わたしを、患者のところまで連れて行って。」
世間に知られるリリアスの効能は、とあるクマの伝染病に効く特効薬。
ローがそれを欲しがる理由を、モモはひとつしか知らない。
ベポ……!