第34章 起きて見る夢
そんなローの邪心に反応してか、サルたちがキーキーと騒ぎ立てる。
(うるせェな…。)
今、いいところなんだ。
ローの手が顔を隠す手を外そうとして そっと触れると、ビクリと彼女の身体が震え、イヤイヤと頭を振った。
キャラメル色の髪が舞い、染み込んだ“香り”がふわりと漂う。
瞬間、息が止まるかと思った。
(この、香り…は…。)
胸が痛い。
締めつけられるようだ。
この痛み、前にも感じたことがある。
この香り、前にも嗅いだことがある。
そう、先代の船に染み付いていた…あの香りだ。
お前、この香りを…痛みの原因を、知ってんのか…?
ローの戸惑いが、知らず知らずのうちに、彼女の腕を握る手の力をギリリと強くさせた。
「……ッ!」
彼女が腕に感じる痛みに身じろいだ。
その時だった。
「てめぇッ、母さんに触んじゃねーッ!」
ガサッと茂みから誰かが飛び出してきたかと思えば、手に持つ木刀で強烈な一撃を放った。
「…!」
いくら気を取られていても、さすがにソレを食らうほどバカじゃないが、思わず彼女の腕を離し、数歩距離を取った。
「……コハク!?」
彼女の方も驚いて顔を上げ、飛び出してきた“誰か”の名を叫ぶ。
飛び出してきた“誰か”の正体…コハクは、素早くローと彼女の間に入り、ガルル…と牙を剥いた。
「てめぇ、約束したはずだよな!? 母さんに手を出さないって! ちくしょー、やっぱり海賊なんて信用するんじゃなかったッ。」
「母さん…?」
コハクの言葉に首を傾げた。
どこに母親がいるというのだ。
そして、コハクの身体越しに へたり込んだ彼女と目が合う。
(……まさか。)