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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第34章 起きて見る夢




おそらく全速力で走る彼女を追って、ローは森の中へ入った。

脚のリーチの差もあり、ものの数秒で追いついてしまったが、そこからどうすればいいのかわからなくなる。

もし彼女がローを怖がっているのなら、ここで無理に引き止めるのは逆効果だ。

かといって、それ以外に自分から逃げる理由があるとは思えず、忌々しく思う。

たかが住人の女だ。
なにを気を遣う必要がある。

むしろ用なんてないんだ。
放っておけばそれでいいはず。

それなのに、どうしてこんなに気になるんだろう。


しばらく追いかけるうち、彼女の息が上がっていくのがわかった。
たいした距離も走っていないのに、なんて体力の無い女だ。

彼女の逃げ惑う姿に反応してか、森がざわめき始めた。

チラリと横目で様子を見れば、樹の上からサルたちが警戒したようにこちらを窺っている。

モモを追うローを敵と判断しているらしい。

サルが彼女を仲間だと思っていることが、少しだけおかしかった。

次第に地を這う根っこのせいで足場が悪くなってきた。

(コイツ、転ぶな……。)

そう思ったのは、本当に直感と言うしかない。

そしてローの想像通り、彼女は樹の根に足を取られ、簡単にバランスを崩した。


ガシ…ッ。

咄嗟に彼女の腕を掴み、支えた。

へたり込む彼女の腕をローが取り、自然に捕まえるような体勢になる。

「……オイ。」

「……。」

呼び掛けてみるけど、俯いた彼女は顔を背けたまま、こちらを振り向こうとしない。

「怪しいモンじゃねェよ、こっちを向け。」

「……。」

一瞬ピクリと肩を震わせたが、やはり背けたままだ。

なぜ こちらを向かない…?

さっきはあんなに遠慮なく見つめてきたくせに。

彼女のあからさまな変貌に苛つき、無理に腕を引いてこちらを向かせた。

「……ッ。」

ローの力に抗いようもなく、クルンとこちらを向いた彼女は、未だ収まらない涙を 瞳ごと片手で隠した。


顔が、見えない…。

その手が邪魔だと思った。

彼女の顔が、瞳が見たい。



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