第33章 再会の指針
今日は本当に天気がいい。
モモは大きなジョウロを持ち上げながら、ご機嫌でスキップをした。
ここはモモが作った菜園。
自宅から少し離れた菜園は、モモが長い年月をかけて広げていった とっておきの場所だ。
薬草はもちろん、野菜や果樹にいたるまでモモが育てている。
歌を使って育て上げた“子供”たちは、普通のものとサイズも効力も味も、なにもかもが上回る。
モモはここで『自分の歌で育てた薬草
を使って薬を作る』という夢を果たしていた。
「おはよう、いい朝ね。今日もお手伝いをしてくれる?」
畑にたどり着いたモモは、すぐ近くで群れを作り、こちらの様子を窺っていたサルに声を掛ける。
「キキッ!」
心得た! とばかりにサルたちは鳴き、群れが散り散りに分かれていく。
この島に生息するサルたちは、とても頭が良い。
初めのうちは、外から来たモモをひどく警戒していたが、この6年間ですっかり仲良くなった。
こうして菜園の手伝いをしてくれるほどに。
その代わりといってはなんだが、モモもサルたちが菜園の果物を食べても気にしない。
(ご近所付き合いってやつよね…。)
ご近所さんとのお付き合いは大事だって、昔 母が言っていた気がした。
サルをご近所さんに含めていいのかは微妙なところだが、モモは今の生活に満足している。
愛する家族がいて、親切なご近所さんに恵まれ、そう頻繁じゃないけど友達も会いに来てくれる。
そして、遠く離れていても、あなたを知ることができる。
先日届いた新聞のトップニュースは、未だにモモの胸を熱くしていた。