第33章 再会の指針
緩やかな坂道を登っていくと、島の中心部へと到着した。
こと辺りは比較的樹木が少なく、野原のようは平地が多い。
そんな野原に、ひときわ大きな樹が1本聳えていた。
「うわ、なんじゃコリャ…。家、か…?」
シャチが驚くのは無理もない。
大きなその樹には、ドアや窓が設置されており、家に見えなくもない。
だけど、家と呼ぶには樹と合体しすぎていないか。
「ここがオレの家だよ。こういうの、ツリーハウスって言うんだろ?」
「いやー、どうッスかね。」
世間一般のツリーハウスは、もっと別なものだと思うけど。
「ちょっと母さんを呼びにいくから、お前らはここで待ってろよ。」
突然海賊なんかを連れて家に入ったら、いくらモモでもビックリしてしまうだろう。
「いいか、絶対に勝手に入ってくるなよ。」
「…わかったから、早く行け。」
いい加減、その念押しにも飽きた。
ローはシッシッとコハクを手で追いやり、家の中に入らせた。
まったく、母親を想う強さは見上げたものだが、ここまで強いとマザコンの域に入りそうだ、
(イヤ、6歳なら普通か…。)
コハクがしっかりしているので、つい年齢を忘れてしまう。
(……遅いな。)
それからしばらく時間が経ったけど、コハクは未だ家から出てこなかった。
覗いて声を掛けたいけど、家に絶対に入らないという約束をした手前、なにもできない。
だからこうして、暇を持て余していた。
(チ…ッ、時間がねェのに。)
苛立ってもしょうがない。
ローは近くの樹にもたれかかり、ジッとコハクを待っていた。
その時…。
『───……。』
(なんだ…?)
今、なにか聞こえた。
『───……♪。』
(……歌声?)
そう、どこからか歌声が聞こえてくる。
家の中からではない。
もっと先から…。
ローは樹から背を離すと、惹かれるように音の出所へと足を向けた。