第33章 再会の指針
「なぁ、コハクは生まれてからずっとこの島にいるのか?」
コハクの家に行く道すがら、シャチたちは彼にいくつか質問をしてみた。
「そうだよ。」
「というか、コハクはいくつッスか?」
「6歳になった。」
6歳…。
2人の質問に耳を傾けていたローは、内心驚いていた。
ガキだガキだとは思っていたけど、そこまでガキだったとは。
しかし、年齢の割にコハクはとてもしっかりしている。
母を守ろうとする姿勢もそうだし、海賊に立ち向かう度胸や、罠作りだって。
とても6歳とは思えない。
「母ちゃんは薬剤師で、父ちゃんはなにしてんだよ。医者か?」
「…父さんは、いない。」
「え…ッ。」
しまった、地雷を踏んでしまったか…! とビクビクしたけど、シャチの思惑とは異なり、コハクはなんでもないように歩き続けた。
「変に気を遣うなよ。父さんは、オレが生まれたときからいないんだ。」
コハクにとっては、モモがいて、ヒスイがいる。
そんな当たり前の家族が幸せなのだ。
「…死んじまったんスか?」
「オイ…、よせ。」
こんな子供に根ほり葉ほり聞くものじゃない。
どうしてコイツらは、こんなにもデリカシーがないのか。
「ロー、別にいいって。母さんが言うには、オレの父さんは海賊で、今も海のどこかにいるんだってさ。」
母曰わく、コハクの父は、世界一強く、世界一格好いいらしい。
そんなことを言われても、実物を見たことがないコハクは、いつも「ふーん」と相槌を打つだけだ。
「父さんの名前とか、わからねぇのか? 名のある海賊なら、俺たちわかるかもしれねぇぞ。」
「さあ…? 聞いたことないし。オレ、別に父さんがいなくても平気なんだ。母さんのことは、オレが守るしな。」
「母ちゃん守るって…。お前…、格好いいな…。」
「……。」
だからか、と思った。
コハクは父の代わりに母を守ると決めたのだろう。
だから、こんなにも大人びてしまっているのだ。
母を、家族を想う気持ちはローにもわかる。
ふと、今は無きフレバンスの町を思い浮かべた。