第33章 再会の指針
コハクの条件に、ローはしばし こめかみを揉んだ。
コイツの母親が美しかろうが、そうでなかろうが、全くもってどうでもいい。
それもまた、子持ちの女なんて、さらにどうでもいい。
そもそも、ローは女に興味がない。
昔はそうでもなかったが、いつからだろうか、女にまったく魅力を感じなくなってしまったのは…。
「安心しろ、俺たちがお前の母親に手を出すことはない。」
「…本当だな?」
しつこいくらい、念押ししてくる。
それだけコハクにとっては、母親が大切なのだろう。
「ああ、誓う。…お前らも、いいな?」
「「ヘイ!」」
シャチとペンギンが声を合わせて返事をし、コハクはようやく納得したようだった。
「気が済んだなら、さっさと案内しろ…ガキ。」
「ガキ呼ばわりすんなよ、オレはコハクだ。」
「ああ…。いいからさっさと案内しろ、コハク。」
こうしてる間にも、ベポは苦しんでいるのだ。
「……。」
しかし、コハクは案内をしようとせず、ジッとローを見上げたままだった。
「…なんだ。」
「で…?」
「は?」
なにが、で…? なのかわからない。
「オレは名乗ったんだぞ。まったく、礼儀知らずなヤツだな。」
「……。」
このクソガキ。
こんなガキに礼儀知らず呼ばわりされては、世も末だ。
「…トラファルガー・ローだ。」
「ふぅん。じゃあ、ついてこいよ、ロー。」
あっさりと呼び捨てられ、イラッとする。
どっちが礼儀知らずだ…!
コイツこ母親が美しい云々はどうでもいいけど、ここまでクソ生意気なガキの母親には、興味が出てきた。
(親の顔が見てみたいってのは、こういうことだな…。)
とりあえず、どういう育て方をしたのか聞いてみたい。