第33章 再会の指針
せっかく目的のリリアスが見つかりそうなのに、ますます関係が悪化しそうな2人に慌てたのは、シャチとペンギンの方。
「まあまあ…、落ち着けってコハク。船長に悪気はないッス。」
「…今のをどう取りゃ、悪気があると思えんだ。」
「船長、ちょっと黙っててもらえます?」
今、頑張ってコハクを宥めてるんだから!
仲間たちの言いように、ローは不服そうに顔をしかめたが、結局それ以外反論しなかった。
「で、お前の母さん、マジでリリアスを持ってんのか?」
「ああ。それに母さんなら、その仲間の病気を治す薬も作れるよ。」
モモに作れない薬なんてない。
お世辞ではなく、彼女は世界一の薬剤師なんだ。
「本当ッスか…!? じゃあ、案内してくれよ。」
「いいよ。…ただし、ひとつだけ条件がある。」
「…条件?」
見返りは求めないと啖呵を切ったくせに、条件を出すとは。
「なんだ、言ってみろ…。」
大事な仲間のためだ。
多少難題だったとしても、必ず飲んでみせる。
「ぜっったいに、母さんに手を出すなよ!」
「……。まさか、ソレが条件か?」
少し待っても続きを言われないものだから、念のため確認する。
「ああ。」
大きく頷くコハクに、呆れてため息が出た。
「ハァ…。言われなくても、この島で暴れる気はねェよ。」
海賊を警戒するのは良い心がけだが、ここまできて、まだ危害を加えると思われるのは心外だ。
しかし、コハクは納得しかねるように首を振る。
「オレが言ってるのは、そういう意味じゃねーよ。…母さんは、すごい美人なんだ。」
「……。」
今度こそ、言葉が出なかった。
つまり、そういう意味の“手を出すな”ということか。