第33章 再会の指針
3ヶ月…。
ローはたった今、目の前のガキ…コハクが言った期間を頭の中で復唱した。
まず最初に思ったことは、待ってられないということ。
ベポの病は、刻一刻と悪化をたどっている。
とてもじゃないけど、3ヶ月の猶予があるとは思えない。
続いて思ったのは、本当にないのかということ。
たかが子供の言うことだ。
1から全部信じるのは どうかと思う。
島の隅々まで探せば、見つかるのではないか。
「…行くぞ、シャチ、ペンギン。草の根掻き分けてでも探し出す。」
「え…、でも…船長。」
シャチはローとコハクを交互に見た。
確かにコハクはまだ子供だが、利発そうな物言いや、子供と思えぬ行動力に驚いたし、彼の言うことを無視していいものか迷う。
「お前、オレの言ったことが聞こえなかったのか? リリアスは今の時期、この島のどこを探したって見つからねーよ。」
島のことなら、なんでも知っている。
どこにどんな動物や植物が生息しているか、時期によって咲く花はなにか、動物たちの繁殖期はいつか。
だって、この島全体がコハクの家だ。
「…そりゃァ、貴重な情報をどうも。だが俺たちにも、探し出さなきゃならねェ理由がある。お前のひと言で、諦めるわけにいかねェんだよ。」
ローの言葉に、シャチもペンギンも頷き、彼の後に続く。
「ありがとな、コハク。お前のやったことは、正直すんげぇムカついたけど、許してやる。だから、お前も許せ。俺たちは、なにも島を荒らしたりらしねぇよ。」
シャチにポンと頭を撫でられ、「じゃあな」と告げられた。
瞬間、コハクの胸の内に ある感情が芽生えた。
それは…“悔しさ”
なんだよ、ないって言ってんのに、オレのことが信じられないってのか。
コハクには、友達がいない。
ヒスイは相棒だし、メルディアはモモの友達。
だから、こんなふうに信じてもらえない悔しさや、置いていかれる寂しさを感じたのは、初めてのこと。
「待てよ、どうしてそんなにリリアスが必要なんだ。」
悔しくて、ついそんなことを聞いてしまった。
その問いかけに、ローはゆっくりとこちらを振り向き、こう言った。
「仲間の命のためだ。」