第33章 再会の指針
「なぁ、ボウズ。お前、名前は?」
俺はペンギンだ、と名乗ってからコハクの名を聞く。
「……コハク。」
海賊なんかに名乗ってたまるか、と思っていたが、先に名乗られてしまっては仕方ない。
モモも礼儀は大事だと言っていた。
「そうか、コハク。俺たちゃリリアスって植物を探してんだが、知らねえッスか?」
ごく自然に質問に持っていったペンギンに感心する。
コイツにこんな特技があったとは…。
ローは子供が苦手なので、正直、相手をしてもらうのはありがたい。
「リリアス…?」
コハクは眉を寄せた。
「知ってんのか? 俺たちの仲間がよ、その草でしか治せない病に掛かってんだ。」
先ほどの恨みなど忘れたのか、シャチがズイッと身を乗り出す。
「病気って…、リリアスはクマの伝染病に効く薬草だぞ。アンタたち、仲間にクマでもいるのかよ。」
クマなんて仲間にいるわけない。
騙そうったって、ムダだぞ。
きっと彼らは嘘を吐いてモモを狙っているのだ。そう思った。
しかし、返ってきたのは意外な反応で…。
「オイ、ガキ…。なぜリリアスがクマの病気に効くと知っている。」
それはローでさえ、苦労して知った事実だ。
こんな子供が知っている知識ではない。
「なんでって、母さんから聞いた…。…!」
うっかり口を滑らせた。
きっとコイツらはモモが狙いだったのに。
案の定、海賊たちはモモのことに反応をした。
「母さん…? お前の母親もこの島にいるのか?」
「…どうだっていいだろ!」
「……。」
確かにどうでもいい。
今ここで重要なのは、コハクの家族構成ではなく、ベポの病に効く薬草だ。
「…リリアスなら、今は生えてねーよ。」
「なに…?」
告げられた情報に耳を疑った。
「だから、リリアスは今の時期は生えてないんだよ。あと、もう3ヶ月もすれば芽を出すかもしれないけど…。」
いくら春島とて、同じ植物が1年中息づいているわけではない。
植物には周期というものがあるのだ。