第33章 再会の指針
急に解放された身体が宙を舞い、ドシンと大きく尻餅をついた。
「…ぃッ…てぇ、って…ヒスイ!?」
何事かと思って見上げると、状況に目を剥いた。
男の顔面にベッタリとヒスイが貼りついているのだ。
「お前…、なにやってんだよ…。」
一見、自分を助けたように見えただろうが、そうではないことをコハクは見抜いていた。
ヒスイは攻撃するとき、触角を鞭や刃状に変形させて戦う。
こんなふうに貼りついたりしない。
そしてなにより、ヒスイは今、男に擦り寄っているのだ。
嬉しそうに、スリスリと。
(……ヒスイ?)
相棒の見たことのない行動に、コハクは応戦するのも忘れ、しばし見入ってしまった。
「…ぶはッ、なんだコイツは…ッ!」
ローはへばりつく物体をベリッと引き剥がすと、そのまま地面へ放り投げた。
「きゅ……。」
ポヨンと投げ捨てられたヒスイは、ローの行動にというより、彼の言葉にひどく衝撃を受けた。
「きゅうぅ…。」
そして悲しげに鳴くと、触角をシナシナと萎らせてコハクのもとへと駆け寄ってくる。
「…お前のペットか?」
「ペットじゃねぇ! 相棒だよ!」
ローの言いようにあからさまにムッとして、コハクは眉をひそめて睨み上げる。
「別にどうでもいいが…、なぜ俺たちをつけ回した。」
「ここはオレたちの島だ! 海賊は出てけ!」
コイツらの島…?
「ここは無人島のはずだが?」
「そんなの昔の話さ。オレは生まれてからずっと、この島に住んでんだ!」
その言葉に、こんな利便性もない島になぜ…? という疑問が浮かんだが、それは聞かなかった。
ローには関係のない話だから。
それよりもこの島に住んでるのなら、こんなに好都合な話はない。
幸い彼は、植物のことにも詳しそうだ。