第33章 再会の指針
(くそォ…!)
コハクが頑張って作ったトラップの数々も、彼らにとっては遊具のようなものだった。
3度に渡って仕掛けてみたけど、結局今も彼らの足を止められないまま。
すっかりネタ切れになってしまい、打つ手がなくなる。
「こうなったら、オレたちが止めるしかないぞ、ヒスイ。」
「きゅ…きゅきゅ。」
ヒスイを頭の上に乗せ、愛用の木刀を握りながら、コハクは気配を殺してソロソロと彼らのすぐ上の樹へと移動した。
すると、海賊たちの話声が聞こえてくる。
「どうやら、向こうは俺たちに先へ進んで欲しくないらしい。それなら前へ進んでみりゃァ、おのずと姿を見せるかもしれねェな。」
プチン…。
頭の中で、糸が切れる音がした。
「それ以上、先に進むんじゃねぇ! 海賊野郎!!」
ダンッと幹を蹴り、リーダーの男へと向かって木刀を振り下ろした。
ガシ…!
しかし、コハクの剣が振り下ろされる前に、彼の逞しい長い腕がコハクの首根っこを掴んだ。
「……ッ! くそ、離しやがれ!」
ジタバタともがき暴れるけど、腹立たしいことに腕はピクリとも動かない。
「まさかとは思うが、さっきから俺たちに付きまとっていたのは…お前か?」
子供騙しな罠だとは思ったが、本当に子供だとは…。
「…だったらなんなんだよ! さっさと島から出ていけ、海賊!」
突然頭上から降ってわいた子供は、必死にローを蹴り上げようと足を振り回す。
(捕まえてやろうとは思ったが、まさかこんなガキとは…。)
とりあえず 蹴りが当たらないように、少し距離を遠ざけたその時…。
「きゅきゅーッ!!」
子供の頭上にへばりついていた“なにか”がローの顔面にベチャリとくっついた。
「……!?」
驚いて思わず手を離すと、持ち上げていた2メートル程の高さから、子供がドサッと落下した。