第33章 再会の指針
「…なんだよ、アレ!」
離れたところから一部始終を見ていたコハクは、作戦の失敗に驚きを隠せなかった。
しかしそれは『作戦が失敗したから』という理由ではなく、むしろ『作戦が失敗した原因』に驚いたのだ。
(瞬間移動…、しやがった!)
確実に穴へ落ちたはずの男が、一瞬で地上へと舞い戻った。
(アイツのしわざか…?)
コハクは瞬間移動した男ではなく、その隣に立つ、スラリと背の高い男を見た。
大きな太刀を携えて、目つきがとても悪い。
いかにも悪人といったふうの男だ。
きっと、海賊団の船長に違いない。
幾度となく狩りをしてきたコハクにはわかる。
発するオーラが違うということが。
「あれが…、メルディアが言ってた“悪魔の実”の能力に違いないな。」
母の友達 メルディアは、島へ遊びに来ると決まって外の世界の話をしてくれた。
コハクはその嘘みたいな話がとても好きだった。
彼女が教えてくれた話はひとつ残らず覚えている。
だから、男の能力が魔法なんかではなく、悪魔の実の能力だとすぐにわかったのだ。
「…チッ、ヒスイ、トラップ2を発動しよう。」
「……きゅ。」
「ヒスイ…?」
先ほどから、心ここにあらずといった様子の相棒に、だんだん苛立ってきた。
「なんだよ、お前、母さんが危ない目に遭ってもいいのか!?」
「きゅきゅッ」
これにはヒスイも反応し、ブルブルと首を振った。
「じゃ、行くぞ。アイツらを追い払わないと…!」
2人は気を取り直して駆け出し、次のトラップのため、さらに先回りをした。