第33章 再会の指針
……まずいな。
十数メートル離れた草陰でコハクはヒスイと共に身を隠し、侵入者の様子を窺っていた。
彼らが島に入って小一時間。
湧き水溢れる泉。
美味しそうな果実をたわわに実らせた樹木。
彼らが求めているであろう物資は山ほどあるというのに、そんなものに目もくれず、一向に引き返す素振りを見せてくれない。
それどころか、さらに奥へと足を進め始める。
この調子では、いずれ島の中心に…モモの下へとたどり着いてしまうかもしれない。
それだけは、絶対に避けなければ。
彼らは海賊。
なにを考えているかわからない。
先ほどからずっと、なにかを探すように歩いているけど、その“なにか”がモモじゃないという保証はどこにもないのだから。
コハクは手にしていた木刀をギリリと握りしめた。
(いざとなったら、オレがアイツらをぶっ飛ばしてやる…!)
しかし、コハクだってバカじゃない。
正面から突撃したって適うはずもないことを知っている。
戦いを挑むのは最終手段として、まずはどうにかして彼らをモモから遠ざけたい。
「ヒスイ、まずはトラップ1を発動させるぞ。」
こんなときのために、家へと続く道には、いくつかの罠を仕掛けてある。
普段は発動しないように封印している。
なぜなら、そのままにしておくと、必ずと言っていいほどモモがソレに掛かってしまうから。
一種の才能なんじゃないかと思うほど、母はドジなのだ。
先回りして作戦を進めようと考え、身を屈めて移動しようとすると、ヒスイがついて来ないことに気がついた。
「…ヒスイ、なにしてんだよ。」
「きゅ…。」
コソコソ声で呼ぶけど、ヒスイは草陰からジッと海賊たちを見つめたままだ。
「オイ、もたもたしてたらアイツらが先に進んじゃうだろ。…ホラ、早く!」
呆けたようにその場に立ち尽くすヒスイの触角を掴み、半ば強制的に移動した。