第33章 再会の指針
「錨を下ろせ。」
ローの合図で錨が海へ投げ入れられ、海賊船は停泊した。
「シャチ、ペンギン、島に上陸するぞ。…ジャンバール、ベポを頼めるか。」
「無論だ。」
ベポの看病をジャンバールに任せ、ローはシャチとペンギンと3人で船を下りた。
「で、船長。ベポの病気に効く薬草ってどんなやつなんですか?」
森へと入る道中、シャチは薬草の詳細を尋ねた。
「リリアスという薬草だ。なんでも、薄紅色の葉をしているそうだが、俺もどんなものか見たことがねェ。」
なにしろ人間には用いない薬草なので、目にする機会がなかった。
(あの植物図鑑…、結局見つからなかったな。)
ふと思い出すのは、ローが所持していた植物図鑑のこと。
ありとあらゆる植物が記載された その図鑑は、ローがコラソンから貰ったものだ。
あの図鑑なら、リリアスのこともわかるかもしれないと思い、必死に本棚を漁ったが、ついに見つからなかった。
そもそも、いつからなかったのか覚えてない。
コラソンがローに残してくれた大切な本だが、医学書でもなければ、本当にただの図鑑だったため、本棚にしまいっぱなしにしていたのだ。
もしかしたら、船の乗り換えの際に紛失してしまったのかも。
今さら後悔しても遅すぎるが、大事な人との思い出の品をなくしてしまったことに、苦いものを感じずにはいられなかった。
だが、なくなってしまったものは しょうがない。
なんとか薄紅色の葉という特徴を頼りに、探し出すしかないのだ。
「……船長。」
しばらく森の中を突き進んでいると、ペンギンがなにかに気づいたように声を掛けてくる。
「ああ、わかってる。」
「…? なに、どうかしたのか?」
ペンギンと同じように、先ほどからずっと気がついているローと、なんのことかわからないシャチ。
無理もない。
相手は相当上手く身を隠している。
島に入ったときから、ずっと誰かに監視されているような視線を感じていた。