第32章 流れゆく時代
…5年後。
グランドラインのとある海域。
1年前のシャボンティ諸島で、ローはひとりの奴隷を助け出した。
名前はジャンバール。
『共に来るか、キャプテン・ジャンバール。』
『その名前で呼ばれるのも久しぶりだ…。天竜人から解放されるなら、喜んでお前の部下になろう。』
こうして、ハートの海賊団のクルーは、4人へと増えたのだ。
「これから俺は、七武海へ入る。」
突然のローの言葉に、クルーたちは飛び上がって驚いた。
「うえぇ!? し、七武海って…なんでまた?」
七武海といったら、言わば政府の狗だ。
そんなものに成り下がるなんて、ローらしくない。
「ドフラミンゴを倒すには、それ相応の準備ってもんが必要なんだよ。」
「……!」
長年目論んできた打倒ドフラミンゴの作戦が、ついに動くときが来たらしい。
それならば、自分たちに口出す権利などありはしない。
「ついに動くんスね。」
「俺はアンタの野望とやらをよく知らないが、船長の意志に従おう。」
「アイアイ! ジャンバール、あとで おれが教えてやるよ!」
「おい、ベポ…。先輩風を吹かすのもいい加減にしとけよな。」
新入りのジャンバールを含め、仲間たちは誰ひとりとして異を唱えなかった。
それはローならば、なると決めたからには必ず七武海になること。
それから、例え形だけは政府の狗となったとしても、決して目的を見失わないとわかっているから。
「さて…、まずはここらの海賊船を片っ端からブッ倒して、心臓を100個ほど手土産にするか。」
「マジですか…。なかなかシュールな手土産ッスね。」
そんな、手土産にお菓子を持ってくわけじゃないんだから、簡単に言わないで欲しい。
ついでに言えば、とっても悪趣味だと思うけど。
しかし、それは誰も指摘しなかった。