第32章 流れゆく時代
『お前はそう遠くない未来、1番大切な宝を失うだろう…。』
彼と最後に言葉を交わしたとき、ホーキンスは自分の占いの結果を教えてやった。
ローの“1番大切な宝”とやらがなんなのかは知らなかったが、恐らくこの様子だと、彼の宝は…。
「そうか、失ってしまったのだな…。」
「…さっきから なにを言ってんだ、てめェは。」
哀れな男だ。
きっと、無くしていることすら、気がついていないのだろう。
「俺の占いは外れない。また占って欲しければ、そうしてやろう。」
「またって…、そもそもお前に占ってもらった覚えはねェよ。俺は占いなんざ信じねェ。」
実際のところ、前回もホーキンスが勝手に占ってみただけなので、ローの言ってることは正しい。
「相変わらず、わけのわからねェ野郎だ。」
そう言い捨てると、ローはそのまま背を向け、仲間と共にオークション会場へと歩いていってしまった。
ホーキンスはその後ろ姿を眺めながら考えていた。
数年前、自分が占ったことは もうひとつあるのだ。
『お前はそう遠くない未来、人生において1番の宝を手にするだろう。』
キラキラと期待をするように自分を見ていたモモに、ホーキンスはそんな占いの結果を伝えた。
それはローの結果とは正反対のこと。
ローが記憶を無くしたのであれば、彼女はどんな想いをしているのだろうか。
とても宝なんて手にできるとは思えないが。
(モモ、お前…。いったいどんな宝を手に入れたんだ?)
最愛の人に、1番大切な宝を無くされて、彼女の手に残った宝はどれほどのものなんだろう。
いくら自分の占いでも、それを知ることはできなかった。