第32章 流れゆく時代
バキバキバキ…。
激しい音を立てて船の装甲が引き剥がされる。
【うぉ…、こりゃ大物だぞ! …ホラ、モモ見ろよ! でっけぇイカが釣れた! 今日の晩飯はごちそうだな!】
ベキバキ…。
1年前、差し替えられたマストが役目を終え、引き抜かれる。
【モモ、今日のオヤツはなぁに? …わァ、カップケーキか! 美味しそう!】
【…俺の分がねェ。】
【え、船長、食うんスか?】
【てめェらの分があって、俺の分がねェ理由はなんだ?】
【え、えっと…。】
ガシャン…、ガラガラ…。
窓が割れ、ガラスの破片が飛び散った。
【胸が苦しい? なにかの病気じゃないかって? …バカだな、お前。それが病気なら、俺なんかもう、ずっと前から掛かってる。】
グシャ…ッ!
ついに船体が潰れ、大きく傾いた。
【俺もお前が妹みたいに可愛いよ。】
【俺、出会った頃…モモのことが好きだったんスよ。】
【モモ、ボクたち…ずっと一緒だよね?】
【モモ…、愛してる。】
モモとみんなが紡いだ思い出は、彼女が愛した“居場所”と共に儚く散っていった。