• テキストサイズ

セイレーンの歌【ONE PIECE】

第31章 旅立ちの風




『運命なんか変えていけるんだって、船に乗って海へ出た。』

「あれ……?」

追い風に助けられ、ぐんぐん前へ進む船の上、ベポが首を傾げた。

「どうしたんスか、ベポ。」

「うーん、なんか…聞こえたような気がしたんだけど。」

「あん? なんかって、なんだよ。」

シャチもペンギンも耳を澄ませてみるけど、なんにも聞こえない。

獣であるベポは、人間の自分たちより感覚が鋭い。

もしかしたら、自分たちに聞こえないものが聞こえているのかもしれない。


『あの日、雪が降る公園で、迎えに来てくれるのを待っていた。』

「んー、なんだろ。……歌かな?」

「「歌ァ……?」」

はぁ? という反応をされるけど、でも本当に、微かな風に乗って歌声が耳に届くのだ。

「ねぇ、キャプテン。キャプテンは聞こえない?」

ベポの問いかけに、ローも耳を澄ませてみた。

しかし、耳に入るのは、ビュウビュウと吹きすざぶ風の音だけ。


「イヤ…、聞こえねェな。」

ローの答えにベポはガックリと肩を落とす。

「えー…? じゃあ、やっぱりボクの耳が変なのかなァ。」

「たぶん、風の音が人間の声にでも聞こえたんスよ。」

よくある怪奇現象などは、だいたいそんな理由なんだから。


「でも…、本当に歌みたいに聞こえたんだよ。」

優しくて、そして少し悲しげで。

でも、温かい歌。

なかなか納得できず、ベポはたった今、自分たちが後にした島を振り返った。



/ 1817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp