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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第31章 旅立ちの風




「キャプテーン! 出航の準備ができたよー!」

デッキからベポが大きな声でローを呼ぶ。

出航と停泊は船長の指示の元に行うのが、この船のルールだ。

ローは軽く頭を振り、起き上がる。

どうも自分は少しおかしい。
部屋の雰囲気や匂いに、いちいち心を乱されるのが嫌で、ローは再びデッキへと足を向けた。


「…ベポ、指針は?」

デッキへと上がったローは、開口一番に航路を確認した。

「アイアイ! 南西の方角だよ、キャプテン! この島でログは書き替えられなかったから、航路は前回と同じままだね。」

「ああ。」

本当に、なにをしに来たんだか…。

無駄なことは好きじゃない。

寄り道した分、先を急がなくては。


「…出航しろ。」

「「アイアイサー!」」

ガラガラと音を立てて、錨が上げられる。

「面舵いっぱーい!」

海に出るために、船がゆっくりと向きを変え始めた。

「チ…ッ、向かい風か…。」

運が悪いことに、風向きは進路と逆方向。
船の速度が遅くなることは否めない。

「どうします? 風向きが変わるまで待ちますか?」

巧みに帆を操りながらシャチが指示を仰いだ。

「…イヤ、面倒くせェ。このまま進め。」

「へーい。」

面倒だなんて言って、結局働くのは自分たち。
船長であるローは、ただ指示を出すだけ。
それは信頼の証でもある。

そんなこと、とっくに慣れたはずなのに、どうしてだろう。

シャチはなぜ、ローのことを「本当は過保護のくせに…」と思ったのかわからない。


それぞれが微妙な違和感を抱えたまま、ハートの海賊団の船は、緩やかに前へ進んだ。



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