第30章 宝よ眠れ
辛い…。
声が震えた。
『さよなら。あなたと過ごした日々ほど、素敵な宝などないわ。』
あなたの中から、わたしが消えていく。
あなたと過ごした日々が、全部なかったことになる。
でもね、それでもわたし、あなたに前を向いて欲しいの。
ドフラミンゴを止めて欲しい。
だって、あなたの夢は…わたしの夢なんだから。
『どんな道を選んだとしても、あなたなら大丈夫。』
全てが終わったら、あなたは新しい夢へと向かって。
海賊王でも、ひとつなぎの大秘宝でも、いくらでも探しに行ける。
あなたは自由なんだから。
だから幸せになってね。
ねえ、例えば…。
その隣に、わたしはいなくたっていいから…!
『不安ばかりなの。でもきっと誰も同じはず…。』
ドサリ…。
ついに倒れたローに近寄り、しゃがみこんだ。
苦しげに顔を歪ませる頬にそっと触れる。
あなたが傍にいなくて、真っ暗になるのはわたしの方。
どうしたらいいか、わからないよ。
『あなたとの日々を、思い出していたいの…。』
でも、大丈夫。
わたしには、あなたがくれた思い出がたくさんあるから…!
【…モモ、愛してる。】
忘れない、あなたがくれた言葉を。
【好きよ、ロー。ずっと、ずーっと!】
忘れない、あなたを想った日々を。
あなたが忘れてしまう分も、わたしがずっと忘れない。
ガ…ッ
意識を失っていたと思っていたローが、モモの腕を強く掴む。
ギリリと痛いほど力を込められ、ローの心の内が伝わってくる。
勝手ばかりでごめんなさい。
でも、そうね。
あなたと別れるなら、笑顔がいいな。
それも忘れてしまっても。
グッと涙を飲み込んだ。