第30章 宝よ眠れ
フザけんな。
ナメんじゃねェ。
お前とガキくらい守り通せる。
言いたいことはいくらでもあるのに、どの言葉も喉から出てこない。
真剣な眼差しをする彼女に、ローは嘘が吐けなかったから。
彼女の言うとおり。
今、自分の周りは、温かな家庭を築けるほど安全じゃない。
普通の航海ならいい。
けど、ドフラミンゴとなれば話は別。
彼はいつでも、ローを、いや…オペオペの能力を狙ってる。
これから先、どれだけ強くなったとしても、彼を倒せる確証もない。
モモだけならいい。
彼女は彼女なりの強さを持ち合わせているから。
けれど、赤ん坊は?
このいつ終わるとも知れない使命に、付き合わすことができるだろうか。
怪物みたいな敵がはびこる新世界に、共に連れて行けるとでも?
無理だ。
それならば、どちらかを諦めなければならない。
「わたしはここで、この子を産んで育てるわ…。」
モモは選んだ。
彼の夢と、別れとを天秤にかけて。
そして別れを選んだのだ。
「認めねェ…。」
モモが自分の傍を離れることは許さない。
「ガキがデカくなるまで待ちゃァいい。」
「…そんなに待ったら、ドフラミンゴはもっと先に行ってしまうわ。」
ただでさえ、彼を倒すためには長い年月を掛けなければいけないのに。
「わたしはここに残るから、みんなは前に進んで行って…。」
彼女がいなくなる?
そんなのは無理だ。
なぜならもう、モモがいない世界なんて思い出せないから。
「なら、俺も…残る…ッ」
「バカ言わないで…ッ!」
ここへきて、初めてモモが声を荒げた。
「わたしは…ッ、あなたにそんな決意をさせるために今まで一緒にいたんじゃない! 船を降りたら…もう海賊じゃないのよ!」
信念を決して曲げないロー。
誇り高いロー。
そんなあなたが、わたしのために信念を曲げないで。誇りを捨てないで。
「そんなの絶対…、許さない…ッ!」
だって、あの日…、約束したわ!
なにがあっても、絶対夢を諦めないって。
なにがあっても、絶対、絶対…!