第30章 宝よ眠れ
「……。」
「…どうしたの?」
ローは急に押し黙ってしまった。
モモの質問には答えない。
いや、答えられないのだ。
「…そんなこと、どうだっていい。つべこべ言わずにさっさと来い。」
わざと怒りで誤魔化そうとする彼に、モモは首を振った。
ねえ、本当はもう…わかってるんでしょう?
「ロー、答えられないなら、わたしが教えてあげる…。」
あなたの夢は…。
『俺の夢は、コラさんの意志を継いでドフラミンゴを倒すことだ。』
あなたはそれを、使命と言ったね。
果たさなくてはいけない約束、とも。
「あなたは言ったわ、ロー。この使命を果たせない限り、海賊王も、ひとつなぎの大秘宝も、夢のスタート地点にすら立てないって。」
あの日、雪の積もる公園で、あなたはわたしに教えてくれた。
だからわたし、決めたのよ。
どんなに辛くても、あなたと別れると決めたの。
「…それが、なんだって言うんだ。それとこれとは関係ねェだろうが!」
「嘘を言わないで。あなたはもう、わかってるはずよ。あなたの夢と、今のわたしが、一緒にいられないことを…。」
あなたが1番わかってるでしょう。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ
この男がどれだけ恐ろしい男か。
そして、これから先、ハートの海賊団がどれだけ危険な航海をするのか。
わたしなんかより、ローの方がずっとずっと理解している。
だってあなたは、船長なんだから…。
わたし、わかってるよ。
あなたが使命を果たすには、その腕に、なにかを抱えたままじゃ走れないってこと。
それくらい危険だってこと。
だからこそ、傍にいたかった。
傍にいて、あなたを支えたかった。
なんの力もなくても、それくらいはわたしに出来るはずだから。
でも、今は違うでしょう?
わたしにも、守るものが出来てしまった。
あなたにも、守るものが増えてしまった。
そんなものを抱えたまま倒せるほど、ドフラミンゴは甘くないって知ってるの。
「…わたしと子供を抱えたままじゃ、あなたは全力で走れない。だから…、ここで別れましょう。」
これが、モモの決意。