第30章 宝よ眠れ
目を開けて、ローの瞳をしっかりと見た。
「妊娠したの、わたし…。」
まだ膨らんでもいないお腹に手を当てる。
きっと外見じゃわからない。
でも、確かにここに、大切な命が宿っているのだ。
「なぜ…、今まで黙っていた…。」
怒っているような、裏切られたような、そんな口調でローが尋ねる。
当然だよね。
こんな大事なこと、隠してたんだから。
でも、それには心に決めた決意があるため。
「船を降りると、…ローと別れると決めたからよ。言ったらあなたは、わたしを逃がしてはくれないでしょう。」
そんなことを言えば、彼は自分を縛り、閉じ込め、一生外へ出してはくれないと思うから。
「フザけんじねェよ。今なら違うと言いたいのか。俺がお前を手放すと思うのか…! バカにすんのもいい加減にしろ!」
ガン! と刀で地面を打つ。
その程度の愛情だと思われているのか。
こんな侮辱、今まで味わったことがない。
「妊娠…? 結構なことじゃねェか。だが、産みたきゃ船で産むんだな。」
モモと自分の子だ。
嬉しいはずなのに、彼女がこんなことを言い出すから、喜びに浸る気にもなれない。
どうしてくれる…。
いや、今はそんなこと、どうだっていい。
きっと彼女は心が不安定なのだ。
今は無理やりにでも連れ帰って、あとでゆっくり話を聞いてやれば、それでいい。
しかし、モモはその考えを読み取ってか、ローに問いかける。
それは、いつか聞いた、あの質問。
「ねえ、ロー。あなたの夢は、なに?」
俺の、夢…?
「今はそんなこと……」
「教えて。」
間髪入れずにモモが問いただす。
うるせェな、前にも言ったじゃねェか。
俺の夢は……。