第30章 宝よ眠れ
ずっと黙っていた秘密。
モモの告白を聞いて、誰もが言葉を失った。
ローでさえも。
「今、なんつった…?」
ようやくしゃべることを取り戻したローが、もう一度聞いた。
彼がこんなにも驚いたところ、見たことがない。
こんなときにまで、また新しい彼を見つけられて密かに喜んでしまう。
モモはゆっくり目を閉じた。
身体に不調を感じ始めたのは、ウォーターセブンを出たあたりから。
熱っぽさが続き、身体がだるい。
また、情緒不安定となり、眠ることができなかった。
ちょうどその頃、ローの懸賞金が上がったものだから、それが理由かと思っていたが、実際は違っていたんだ。
モモの身体は徐々に変化していって、酒や火薬のような強い臭いを受け付けられず、吐き気すらもよおした。
自分ですら気づかなかったものだから、雪の上を駆け回ったり、足を滑らして転んだり、今考えると無茶な行動ばかりしたと思う。
そして、お腹に新たな命が宿ったと知ったのは、ドラム王国でのこと。
ベポと共にDr.くれはを訪ねた、あの時。
100年余りを医者として生きる彼女は、ひと目でモモの状況に気がついた。
だから、暖かい家へ入れてくれたし、薬を舐めようとしたモモの手を叩いた。
『お前、まさか気づいていないんじゃないだろうね。』
『呆れた…。それでもお前は、医療に携わる人間かい。』
『いいかい、お前は……、妊娠しているんだよ。』
あの時の自分は、今のローと同じ顔をしていたと思う。
なに言ってるの?
信じられない…って。
それから真っ白な頭で森をさ迷い、雪の中を転がって、気づいたのだ。
わたし、今、とんでもない宝物を宿してるって。
だって、わたしとあなたの子だよ?
わたしとあなたが愛し合った証が、確かにここに、存在しているの。
だからね、決めたの。
絶対に産むって、決めた。
でも、それにはね。
もうひとつだけ、決めなくちゃいけないことがあるって、わかってたの。