第30章 宝よ眠れ
緑でうっそうとしているけど、この島はそれほど大きくない。
それからしばらく歩くと、島の中心部に着いた。
「お、本当だ。ここはあんまり樹が生えてないな。」
どちらかといえば野原に近い。
歩いてきた道は、なだらかな上り坂になっていたようで、ここから見る海の景色は そこそこ高度があり、停泊している自分たちの海賊船も眺めることができた。
それがモモにとって、なによりの救い。
「よいしょっと…。」
ドサリと持ってきた荷物が下ろされる。
「えっと、土を替えるんだよね。モモ、どの辺の土を取る? ボク、手伝うよ。」
「……。」
ベポの問いにモモは答えない。
それどころか、海を眺めたまま、こちらを振り向きもしなかった。
「モモ…?」
不思議に思って呼びかけるけど、やはり反応しない。
聞こえていないはずがないのに…。
ドクン…。
どうしてだろう、胸が騒ぐ。
黙って海を見つめる彼女の後ろ姿に、なぜだかローの胸は不安な想いでいっぱいになる。
不安だって?
そんなの、しばらく感じたこともないのに。
そんな気持ちを振り切るように、彼女を呼んだ。
「……モモ。」
ローに名を呼ばれ、モモはゆっくりと振り返った。
その顔に笑みはない。
「…モモ、船に…戻るぞ。」
どうしてそう言ったのか、自分でもわからない。
でも、本能的に、彼女を早く船に連れ帰らなければと思った。
「え、キャプテン。まだ土を替えてないよ?」
「…うるせェ、いいから戻るぞ。」
今度は声に怒気がこもる。
「ど、どうしたんスか、船長…。」
ピリリと張り詰めた空気に、仲間たちが戸惑う。
「聞こえねェのか、船に戻るぞ…ッ」
ローが1歩踏み出すのと同時に、モモが口を開いた。
「…戻らないわ。」
ピタリと足が止まる。
「…なんだと?」
「わたしはもう、船に戻らない。」
もう一度ハッキリと言った。