第30章 宝よ眠れ
「うわァ、こりゃ…どこもかしこも植物ばっかッスね。」
島に足を踏み入れてから、うんざりするようにペンギンが言った。
「そりゃ、そうだ。ここは無人島なんだから。」
「だが、資源は腐るほどありそうだな。旅船がたまに補給に訪れるのも頷ける。」
食べ物に水、薬草にいたるまで、あらゆるものが手に入りそうだ。
「んじゃ、モモにとっちゃ天国かもな。」
「…うん。」
そう、ここは わたしにとって、天国の島。
だから、この島を選んだ。
「んで、どこで薬草の土を替えるって?」
シャチがキャリーケースを、ベポが薬草の麻袋をそれぞれ持っている。
「地図で見たら、島の真ん中に少し開けた場所があるみたい。わたし、そこまで行きたいの。」
重たいのにゴメンね、と謝る。
「んにゃ、どうってことねぇよ。兄ちゃんに任せとけ!」
「…なんだ、兄ちゃんってのは。」
フフンと胸を張るシャチを、ローが横目で見た。
「へへ…、秘密ですよ。こればかりは、船長にも教えられねぇ。」
ニヘニヘと笑う様が気持ち悪い。
むしろ聞いて欲しそうな顔をしているが、とりあえず無視をした。
ふと、モモの様子が気になった。
いつもなら未知の森に歓喜し、我を忘れて探索しまくるくせに、今日はやけにおとなしい。
「…オイ、調子でも悪ィのか?」
言って額に手を当てる。
「ん…? ううん、そんなことないわ。」
ふるふると首を振るけど、彼女の額はほんのり熱かった。
微熱があるようだ。
近頃は元気になったと思っていたけど、まだ本調子ではなかったらしい。
彼女が言い出さないのなら、しばらく様子を見ようと思っていたけど、そろそろ限界だ。
船に戻ったら、無理にでも診察しよう。
そう、決めた。