第30章 宝よ眠れ
翌朝、船はついに緑の島“シルフガーデン”へと到着した。
「モモー! 島が見えたよー!」
自分を呼ぶベポの声に、モモは戦場に赴く戦士のように、覚悟を決めて立ち上がった。
デッキに上がると、フワリと青々しい緑の香りが鼻をくすぐる。
目の前には緑の島の名に相応しい、自然溢れる無人島がたたずんでいた。
ここが、わたしの最後の島。
「すごいね、モモ。地図は見てたけど、ここまで緑ばっかりの島と思わなかったよ。珍しい薬草があるといいね。」
「…うん。」
行きたがっていた島にモモを連れてこられて、ベポはとても嬉しそうだ。
「ありがとう、ベポ。」
「いや、ボクはエターナルポース通りに進んだだけだし…。」
そう言いながら照れ照れと笑っている。
「よし、上陸するぞ。準備しろ。」
「「アイアイサー!」」
ローの指示を得て、船の錨は下ろされた。
ガラガラガラ…。
「お、どうしたよモモ。すげぇ大荷物じゃん。」
船内から引っ張ってきた大きなキャリーケースに仲間たちが驚く。
「うん、この島でやりたいことがあるの。これは、そのためのもの。」
「やりたいことって、なんスか? また実験?」
「…そんなところ。」
本当に仕事熱心だなぁ。と言いながら、その荷物を持ってくれる。
「ベポ、申し訳ないんだけど、この子たちを持ってくれる? 土を入れ替えたいの。」
モモが指し示すのは、船で育てている薬草たちの一部。
育て方の難しい薬草だ。
この子たちはモモでなければ育てられない。
「そんなの、おやすいご用だよー。」
持ち運びしやすいように、土ごと麻袋に詰めた薬草を、ベポは軽々持ち上げた。
モモの荷物を手に、仲間たちは次々と島へ降りた。
「…ヒスイ、行きましょう。」
ポツンとデッキで船を見ているヒスイの背中に声を掛けた。
「きゅ…。」
振り返ったヒスイは、こちらに駆け寄り、そしてもう一度だけ船を見た。
つられてモモも、船を見る。