第5章 あなたになら
モモの首筋に、赤い花びらのようなキスの痕がついた。
その痕を親指の腹で撫でながら、ローは満足げに笑った。
出来るなら、モモの身体中にキスをして痕を残したい。
独占欲
支配欲
どちらもこれまでのローにはなかった言葉。
だが、彼女のことについては、その限りではない。
突然の行為に戸惑っているモモの顎を捉え、こちらを向かせた。
恥じらいに耐える彼女の表情が、よりいっそうローの欲望をくすぐり、噛みつくように唇を奪った。
「──ッ」
非難めいた吐息を発したが、聞いてやらない。
今日1日、ローがどれだけやきもきさせられたことか。
モモには少し思い知ってもらわねば。
歯列の隙間を割り開かれ、ぬるりとした舌が口腔に押し込まれていく。
(や…ッ、…なにこ、れ。)
ぬるぬるとした舌先が擦りつけられ、口蓋や頬の裏、そして歯茎にまで這わされていった。
生まれて初めてのぞくぞくとした感触に、身体が引きつる。
思わず離れようとするが、ローの腕がそれを許さない。
そのまま激しく舌を絡められていく。
一声も上げられないまま、唇を奪われ続けて、次第に酸素が不足した呼吸が荒くなる。
頭がチカチカし始める直前にローは唇を離した。
「…ハァ、ハァ…ッ」
「ガキには少し刺激が強すぎたか?」
涙目でローを睨み上げると同時に、モモの身体はクルリと反転させられた。
弾みにドサリとソファーの上に仰向けで倒れると、その上にローがのしかかる。
(な、なに…?)
どいて、と伸ばした手をローに掴まれる。
「お前は今日、二度に渡って俺から逃げやがったな。」
一度目はこの船から、二度目はローが海軍と戦ってる隙に。
モモは申し訳なさに瞳を伏せた。
(ごめんなさい…。)
「いいや、許さねェ。お前は俺のものだと言ったはずだ。」
ジィっとローの手がファスナーを引っ張る。
(……えッ)
「悪い子にはお仕置きが必要だろう?」
言うが早いか、ローはパーカーのファスナーを一気に下までおろした。
前が開き、あっという間に下着姿になってしまう。
(やッ…。)
慌てて掻き合わせようとするが、その前にぶかぶかだったパーカーはスルリとモモの身体から離れてしまった。