第30章 宝よ眠れ
「ペンギン…、アイロンかけ上手くなったね。」
「そうッスか? へへへ。」
ロー限定ではあるが、しっかりとアイロンかけをするペンギンにモモは感心した。
うっかり焦げ目でも作るかと思ったが、ペンギンはマイペースなだけで、ドジッ子スキルは付いていないらしい。
「ねえ、ペンギン。前にあなた、もっと頼って欲しいって言ってくれたよね。」
「ん…、ああ。そりゃ、今でも思ってるけど。」
少し前のモモは、洗濯物すらろくに手伝わせてくれず、ちっとも頼ってくれないから、ペンギンとしては少し寂しかった。
「あれからわたし、考えたの。ずっと自分のやるべきことは自分で責任を持つべきって思ってて…。でも、そうじゃないよね。」
それはローからも言われた。
ひとりで暮らしいるわけではないのだ。
頼らないということは、少なからず相手に壁を作っているということ。
きっとモモも、逆の立場だったら、どうして頼ってくれないのかと寂しく思うだろう。
「わたし、甘え方って…よくわからなくって。ちょっと反省したわ。」
シュンと俯くと、不意にガシガシと頭を撫でられた。
「……!」
驚いて顔を上げると、優しげな笑みをしたペンギンがいた。
「モモはさ、考えすぎなんスよ。もっと気軽に行こうぜ! 俺なんか見てみろよ、ホラ、なんも考えてねーから。」
どうだ、とばかりに胸を張る彼に、思わず吹き出してしまう。
「ペンギンのそういうとこ…、わたし好きよ。」
彼がいるだけで、暗い空気も吹き飛ぶだろう。
この船では、大事な大事なムードメーカー。
「うっそ! 今の言葉、もう1回言って!」
「……? ペンギンのそういうとこ、好きよ。」
ぐはッ、と血を吐きそうになる。
あー、ヤバイ。
もう死ねる。