第30章 宝よ眠れ
「なんだよ、大げさなヤツだな…。そんなの当たり前だろ。第一、あれは傍にいなかった俺の責任なんだぜ。」
釣りに誘っておきながら、傍を離れた自分が悪いとシャチは言う。
「それだけじゃないわ。アイフリードに捕らわれたときだって、ローが危ないのに、あなたもペンギンも、わたしを気遣ってくれた。」
愚かにも人質となってしまったモモ。
シャチとペンギンは、船長であるローがどれだけ痛ぶられようとも、モモを気遣い、その場を動かなかった。
「あれは…、そうするしかなかったんだよ。ごめんな、俺がもっと強かったら、お前も船長もまとめて助けてやれたのに。」
「ううん、すごく…感謝してるの。」
ありがとう、とモモは心からの笑顔で微笑んだ。
「なんだよ、クソ…照れるな。」
こんなふうに女の子から眩しい笑顔を向けられてお礼を言われると、いくら船長の女とはいえ、なんかドキドキする。
「シャチって…なんかお兄ちゃんみたい。」
「お、…お兄ちゃん!?」
グサッと胸に刃が刺さる。
「あ…、わたしはひとりっ子だから本当がどうなのかはわからないけど、いたらこんな感じかなぁって。」
「いや…、俺もお前が妹みたいに可愛いよ。」
傷つくハートをさすりながらそう言うと、意外と悪くないように思えてきた。
(妹か…。)
いや、むしろ良い…!
女としてモモを見るのはアウトだが、妹ならセーフだ。
なんか萌えてくる!
「モモがそんなに言うなら…、お、お兄ちゃんって呼んでもいいからな…!」
「ふふ、ありがとう…お兄ちゃん。」
ズキューン!!
あ、今、撃たれた。
シャチはガクリとその場に崩れ落ちた。
「え、シャチ、大丈夫!?」
驚いて揺さぶると、気絶している。
急病かと思ってどきまぎすると、うわ言のように「もう1回お願いします…」と呟きが聞こえた。
どうやらそっちの病気らしい。
「なによ、もう。…心配した!」
幸せそうに気を失うシャチの頬を撫でた。
いつまでも、調子が良くて、頼りがいのあるあなたでいてね。
さようなら、お兄ちゃん…。