第30章 宝よ眠れ
その日の午後、モモはペンギンと一緒に選択物を干していた。
「ペンギン、ちゃんとシワを伸ばして干さないと、乾いたあとが大変よ。」
「こう?」
パンパンとシワを叩き伸ばしてから物干し竿に取り付ける。
「そうそう、シワだらけの服なんて格好悪いでしょう?」
「あー、船長の服にシワ付けると怒られるんスよね…。」
「…今まではどうしてたの?」
当然、アイロンかけなんかしないだろう。
「ベポを乗らせて、体重でシワ伸ばししてた。」
「……。」
それは皺以外に色々と伸びそうだけど。
「あとでアイロンかけを教えてもいい…?」
できれば、ローに動物臭漂う服を着て欲しくない。
「え…、うん。」
マイペースなペンギンは、どうしてモモが彼に洗濯物の干し方やアイロンかけを教えるのか、疑問に思わないようだ。
ただ、「シワ作って怒られるの、嫌だもんなー」と呟いた。
「ベポ、この薬草は殺菌作用があるの。こっちの子は鎮痛に効くわ。」
モモはプランターエリアでベポに薬草の効果を細々説明した。
「お水は1日1回、朝が理想的なの。それから葉の裏に害虫が付いていないか注意して。」
ベポに教えているのは、薬草の中でも育てやすい子たち。
このプランターは船に置いていくと決めている。
ベポはうんうん、と頷きながらも首を傾げた。
「ねえ、モモ。急にどうしたの? 今まで薬草の世話はヒスイと2人でやっちゃって、手伝わせてくれなかったのに。」
モモは自分の仕事を手伝われると、気を遣ってしまうので、仲間たちはなるべく手を出さないようにしていた。
「考え方が変わったのよ。だってほら、この前みたいに具合が悪くなったとき、誰もわからなかったら大変でしょう?」
「あー、そうだよね。」
自分たちは丈夫にできているが、モモは繊細な子だ。
助けてあげなくちゃな、と気合いが入る。
(ゴメンね、ベポ…。)
純真な彼に、わたしはいったい何度嘘を吐いただろう。